野球のピッチャーが1塁走者の盗塁を防ぐために投げる「牽制球」のように、牽制とは相手の自由な行動を抑えるための行為を指します。これを 内部牽制 という場合は、相手チームに対してではなく、自分のチームや社内の誤りや不正を発見し・防止するための機能を指します。
チームの全員が善人でなければ、いつか不正や犯罪が起きます。たとえ善人であったとしても、ミスは発生します。これを気の緩みとかで片付けていると、必ずミス、不正、犯罪が起きます。
気合で解決せずに、仕組みとして内部のミス、不正、犯罪を防ぐのが内部牽制です。

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内部牽制 のレベル

例えば、内部牽制が機能している組織の経理部門では、お金の入金・出金の扱いには、何段階も牽制機能が組み込まれています。

内部牽制機能に明確な分け方があるわけではありませんが、大まかには次の3段階に分けることができると思います。
Ⅰ.機械的牽制:形式牽制、機械牽制、
Ⅱ.社内牽制:部署内の人による牽制、部署による牽制、専門部署による牽制
Ⅲ.社外牽制:社外取締役、監査役、監査法人による牽制、自社設置の第三者委員会

このⅠ~Ⅲで防ぎきれなかった場合、税務調査や行政調査といった名目で、法に則った牽制が入ります。税務調査などは周期的に実施されますが、他の行政調査と同様、退職した従業員や社内の従業員からの内部告発から調査が入ることも、しばしばあります。

Ⅰ.機械的牽制

これは予め組み込まれた手順に従って作業することで、ミスや不正を防ぐものです。
もっともわかりやすいのは、コンピュータソフトなどによる牽制です。
例えば、支払業務のコンピュータソフトを使えば、
・許可された者(ログインできる者)しか操作できない
・一定金額以上は登録できない
・予め登録されている支払い先以外には支払いできない

コンピュータソフトよりも劣りますが、紙でもある程度は可能です。
・チェックリストで不備がないかどうか自分で確認する
・この伝票が起票されていないと手続きが始まらない
・すべての項目を記入していないと受け付けしてもらえない

Ⅱ.社内牽制

これは社内の他者・他部署などによる牽制です。
部内であれば
・所属長の承認印がないと、支払い手続きを受け付けない
・支払伝票の受付確認と出金手続きは別の人が行う
・金庫からを出し入れするときは、必ず2人で行う

お金などの重要資産の扱いで、ミス・不正を防ぐもっとも基本的な方法は、必ず本人以外の人が確認することです。この「本人以外」は組織の大きさによって、同じ部署の人であったり、別の課や部の人だったりします。

チェック(牽制)部門

会社の規模によっては、チェック・確認の専門部署を持っていたりします。これは製造部門の品質管理を担当する部署や、店舗運営のオペレーションをチェックする部署であったり、内部監査室のように、チェック自体が仕事で、各部署の業務が決められた手順どおり進められているかどうかを確認する専門部署もあります。

チェック部門の多くは、業務を担当している部署よりも上位の管理職の配下に置かれます。
製造課の下にチェック部門がおかれてしまうと、どうしても品質管理よりも製造が優先されることになります。現場から独立して管理者に直接報告するという意味で、内部監査室の多くは、社長直属です。

Ⅲ.社外牽制

これは、社外の人材、組織の立場から確認してもらう仕組みです。これは検査・確認の内容により専門性が必要であったり、社会に対して客観性が求められる場合に必要になります。また上場会社の場合は、上場を維持するための機関として設置を義務付けられています。

社外取締役・社外監査役

この場合の社外とは、原則、会社と資本や取引関係の無い会社の人、または弁護士などで会社と顧問契約をしていない人、簡単にいうと会社と利害関係の無い人に限られます。
内部監査室が社内のルールどおりに業務が遂行されているかをチェックするのに対して、社外取締役や社外監査役は、社内のルール自体が法令・社会常識からみて正しいのかをチェックします。

会計監査人

会計監査人や監査法人のチェックは、経理部門の会計知識不足をただし、社長の意図的な会計操作を難しくします。上場企業であれば、会計監査人の適正な証明がなければ、上場廃止に追い込まれます。
会計監査人は、外部牽制に近いものがありますが、外部牽制と決定的に違うのは、会計監査人に報酬を払っているのが会社だということです。会計監査人が会社の不正に加担することはまずありませんが、会社の継続的な存続を支援するスタンスに変わりはありません。

このほか社内の検査や業務の一部を社外に委託し、社外の客観的な視点から不備を知らされることもあります。ただこれが牽制機能として働くかどうかは、発注する側の会社によります。発注する会社側が牽制機能の一つと位置付けていなければ、「余計なことを言うと、次は無いぞ」の一言でおしまいです。

第三者委員会

不祥事の際に設けられる第三者委員会も、本来は社長らが不正を隠蔽することが無いよう監視するための機関として設けられます。第三者委員会は、弁護士や学識者など外部の専門家によって構成され、社会常識を規範として判断を下します。ただ、第三者委員会のメンバーは、会社側から委任された人々ですので、極端に会社に不利な判断を下すことはなく、社会の理解が得られるかどうかが目安のようです。

社内の最終責任者は社長などの最高経営責任者ですが、社外牽制は、社長の判断自体を社会常識から外れていないのかをチェックするものです。

外部牽制

これは主に行政機関の牽制で、基本は法令が守られているかどうかの検査になります。法令違反に該当しそうな事項があれば、査察が強制捜査に発展し、場合によっては、罰金や営業停止、業務改善命令を受け、会社の存続自体が危うくなります。

社外牽制までの内部牽制であれば、自助努力で問題点が解消される可能性がありますが、外部牽制に引っかかってしまうと、場合によっては法による懲罰だけでなく、新聞ネタになり、社会的制裁を受けることになります。

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