会長、社長、専務、常務など取締役の役職にはいくつかあり、それには序列があります。同じ取締役のなかでも、代表取締役なのか、代表の付かない取締役なのかでも違いますし、同じ代表取締役の中でも上下があります。 取締役の序列 を知らないと失礼になるだけでなく、社会人としての常識を疑われることになります。
※ここでは一般的な株式会社の取締役について説明しています。
◆INDEX
⇒ 専務、常務など取締役の役職
⇒ 役職で分かる取締役の序列
⇒ 表見代表とは
⇒ 取締役総務部長など従業員兼務役員
⇒ 執行役員は役員?
⇒ 顧問にもいろいろ
⇒ 取締役の退任/辞任/解任
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取締役の順番の付け方には法則がある

1 取締役は会社法と定款で決まっている

取締役は「役員」の一種ですが、「役員」とは「従業員」に対する言葉で、会社の経営責任を負う側の立場になります。

株式会社(有限会社も含む)の役員の種類は、「会社法」という会社組織を規定する法律とその会社の「定款」で定義されています。

(1.1) 法律で決まっている役員

会社法は、株式会社の基本となる法律ですが、この法律の中で株式会社の役員が定義されています。
会社法で決められている役員は、「取締役」、「監査役」、「会計参与」の3種類です。このうち取締役には、ただの取締役と代表権を持つ取締役(いわゆる「代表取締役」)があります。

ざっくり言うと
取締役は、会社を経営する人
監査役は、株主の代わりに取締役および会社をチェックする人
会計参与は、税理士資格者など会計業務の専門家で取締役と一緒に会計書類をまとめる人

株式会社には取締役は必ず必要で、監査役、会計参与は会社構成によって必須かどうかが決まります。最小の構成では、取締役が1名いれば、会社を設立することができます。

役員になるには、株主総会で選任されないとなることはできませんが、代表を誰にするかは、取締役会(ない場合は取締役の互選)で選ぶことができます。厳密にいうと、役員になることを「選任」、代表になることは「選定」と使い分けます。

(1.1.1) 謄本に記載、代表者は住所も記載される

取締役、監査役、会計参与に就任すると、会社の登記簿謄本に氏名が記載されます。取締役のうち、代表者は、氏名+住所が記載されます。
※取締役1名の会社の場合は、取締役=代表取締役になります。

(1.2) 取締役の役職名は自由に決められる

「社長」とか「専務」とか「会長」とかは、法律(会社法)で定められているものではありません。これらは取締役の中での役割(役職)ですが、どういう役職を置くかは、定款で定め、会社ごとに決めることができます。
定款はその会社の基本となる法律のようなもので、会社設立時に作成し、変更するには、株主総会で承認してもらう必要があります。

(1.2.1)役職名は必須ではない

法で決まっているわけではありませんので、登記簿謄本には、「社長」とか「専務」といった記載はありません。
登記簿に載るわけでもなく、すぐ変わることもあり得るので、会社のゴム印とかには、「代表取締役社長 鈴木一郎」とせずに、「代表取締役 鈴木一郎」としている会社はたくさんあります。

「取締役」、「代表取締役」であるかどうかは明記する必要はありますが、「社長」「専務」などは、必須ではありません。このためホームページでも記載していないケースはよくあります。

(1.2.2) 取締役の役職名のいろいろ

「会長」、「副会長」、「社長」、「副社長」、「専務」、「常務」といったところが一般的ですが、
役職名は、会社で決めてよいので、役職名を株主総会で承認されれば、「取締役相談役」、「取締役顧問」、「取締役CEO」や「取締役COO」と自由に決めることができます。

※CEO、COOという言い方でよく使われるものには次のような役職があります。
CEO (Chief Executive Officer):最高経営責任者 会長または社長と同じ
COO (Chief Operating Officer):最高執行責任者 社長または営業部長と同じ
CFO (Chief Financial Officer):最高財務責任者 財務部長または経理部長と同じ
CIO (Chief Information Officer):最高情報責任者 情報システム部長と同じ
CTO(Chief Technical/Technology Officer):最高技術責任者 ※メーカー系の技術部門TOP
※これらは取締役以外でも付けることはできますが、CEOは取締役でないと誤解されるおそれがあります。

(1.2.3) 人数も自由に決めてよい

通常、会長、社長は1名で、それ以外は複数いても問題ありませんが、もともと法律などで決まっているものでもありません。もし社長を2人置きたければ、会社の定款で「社長1名を置く。」としているところを「社長1名以上を置く。」「社長若干名を置く。」などと変更し、株主総会の承認を得れば可能になります。

(1.2.4) 役付き取締役と平取

代表取締役社長とは「代表」(会社法)+「取締役」(会社法)+「社長」(定款)の3つの役割を指し、常務取締役であれば、取締役の他に「常務」という役をもっていることになります。社長、専務、常務などが付く取締役を役付き取締役といい、これと区別するために常務や専務などが付かない取締役を「平取」(ひらとり)といったりします。
※「平取」は一種の蔑称ですの、公式の場・書類、ましてや本人に対して、決して使ってはいけません。

2 取締役の序列

(2.1) 役付き役員をエライ順に並べると

取締役の役職は自由に決められますが、使われる役職はだいたい決まっており
エライ順も決まっています。
(1)会長 > 副会長 ≧ 社長 > 副社長 > 専務 > 常務 >(平取)
※(平取):専務や常務といった役員としての役職のつかない、ただの取締役

というのが一般的ですが、
(2)代表取締役 > 取締役 というのがまずあり、
(3)代表取締役が2人以上いる場合は、法人印の代表者かどうか
で序列が決まってきます。

(2.1.1) 代表が上位

代表者が一人の場合は、代表者が筆頭になります。
1.代表取締役社長 - 2.取締役会長 - 3.取締役副会長…

2人以上の場合は、(1)の序列が基本です。
1.代表取締役会長 - 2.代表取締役社長 - 3.取締役副会長…

(2.1.2) 法人印鑑証明代表者

代表者には2種類あり、代表者としての印鑑登録をしている代表者と、印鑑登録していない代表者です。代表取締役が2名以上おり、会社が登録している印鑑(法人印)が1本の場合は、その印鑑の印鑑証明に名前が記載されている代表取締役が、筆頭の代表者になります。

法人印の印鑑証明が「株式会社田中商事 代表取締役 田中徳右衛門」で、もう一人、田中健一さんが代表取締役の場合、田中健一(印鑑証明に名前の無い代表者)でも、代表者として契約書等に「株式会社田中商事 代表取締役 田中健一」として押印しても全然問題ありません。ただし会社の印鑑証明添付が必要な契約書等では、「代表取締役 田中徳右衛門」を契約者名にする必要があります。

同じ代表取締役でも、社長だけが会社の印鑑証明の代表者の場合は、
1.代表取締役社長 - 2.代表取締役会長 の序列になります。

(2.1.3) まとめると

(1) 印鑑証明の代表取締役かどうか
(2) 代表取締役かどうか
(3) 役付き役員かどうか
でエライ順が決まってきます。

実際の会社でのエライ順は、その会社のホームページの役員一覧で掲載されている順番です。

3 表見代表

「社長」や「専務」といった役職は、通常は取締役に付けるものですが、「副社長 田中次郎」と取締役でない人に付けることもできないわけではありません。ただしその場合は、田中次郎は、経営陣の一人と誤解されてもおかしくないため、取締役でない人につけるのは適切ではありません。

こういった使い方を「表見代表」といい、事故の素です。取締役でない「副社長 田中次郎」が勝手に他社との契約書に押印した場合は、会社の承諾が無かったとしても、会社として契約したものとみなされます。

相手が取締役かどうかを確かめるなら、その会社の商業登記簿謄本に取締役として名前があるかどうかを確認することです。

4 従業員兼務役員

「取締役総務部長」とか、取締役と総務部長を兼務している役員です。総務部長は社員(従業員)でもなれますので、取締役総務部長は、取締役と従業員を兼務しているとみなすこともできます。その場合は取締役としての役員報酬と総務部長として従業員給与をもらうことになります。
※従業員は、役員以外をまとめた言い方で、従業員=社員、契約社員、パート・アルバイト になります。

社長など役員報酬だけの取締役は、雇用保険や労災の対象外ですが、取締役総務部長のように従業員給与をもらっていれば、そこから雇用保険や労災保険に加入することができます。

※給与明細が役員報酬と従業員給与に分けて記載されるだけで、2倍もらうわけではありません。また分けることが必須ではありません。取締役総務部長であっても全額役員報酬としてもらう会社もあります。

従業員兼務が認められるのは、常務や専務といった役が付かない、いわゆる平取だけです。常務取締役総務部長では、給与は役員報酬のみですので雇用保険や労災保険の対象外です。

5 執行役員

執行役員は、法律(会社法)上の役員ではありません。「執行役員」自体は法律上の定義はなく、定款で定める必要もありませんので、株主総会を開くことなく、決めることができます。

執行役員制度は、自社で決めればよいことですので、執行役員の身分は会社によってさまざまです。だいたいが、取締役一歩手前の部長あたりです。役員か従業員かという分類では従業員になります。
※「執行役」は会社法にもとづく指名委員会等設置会社で使う名称で、執行役員とは意味が異なりますので、混同しないようにしましょう。

6 顧問

顧問には4つの種類があります。
(1)顧問弁護士とか、顧問税理士とか顧問契約を結んだ専門家を顧問と呼ぶケース
(2)役員として就任する予定の人が、株主総会までの期間を顧問として在籍するケース
(3)経営陣だが、アドバイザリー的な位置づけを明確にするめに「取締役顧問」とするケース
(4)取締役や監査役だった人が、役員退任後、会社にとどまるケース

経営に対してアドバイスをしてもらいたい人とかが顧問に就くケースが多いです。名誉職としておいているケースもあります。例えば創業者である取締役が役員を退任した場合とかに顧問になったりします。
顧問と同じような位置けに「相談役」というのもありますが、はっきりした使い区分けの基準はありません。

役員か従業員かでいうと、(2)は社員です。(3)は役員です。(4)は社員です。(1)は社外の人で、その会社の役員でも社員でもありません。

7 取締役の辞め方

取締役(役員)になるには、株主総会で選任される必要がありますが、辞めるのはいつでも辞められます。

役員には任期があり、任期満了のたびに、続けるなら株主総会で再度選任する必要があります。再度選任されることを「重任」と言います。
取締役、会計参与の任期は一般的には2年ですが、株主総会で承認されれば、1~10年に変更することもできます。監査役は一般的には4年ですが、2~10年に変更できます。(※上場企業や上場準備中の会社によくありますが、会社が指名委員会等設置会社や監査等委員会設置会社の場合は、取締役の任期は1年に限定されます。)

一般的な辞め方は、年1回の取締役会で任期が満了したらそこで辞めるケースです。任期途中で辞めることもできますが、任期満了で辞めるのを「退任」というのに対して、任期途中の場合は「辞任」となります。これは登記簿にも記載されます。
ちなみに自主的に辞めない役員を株主総会で辞めさせることもできますが、この場合は「解任」となります。

また代表かどうかは、取締役会(ない場合は取締役の互選)で決められますので、代表を辞める・替える手続きも同じで、株主総会は必要ありません。

一般的な取締役

現在、日本の株式会社数は400万社程度ですが、このほとんどが代表取締役を軸とした会社組織ですので、その前提で記載しています。

代表取締役を軸とした会社組織以外で「指名委員会等設置会社」という形態があります。これはアメリカの制度を導入したもので、グローバルな大手企業等で導入されており、そこには代表取締役自体が存在しません。ただしこの形態の会社は、上場会社の中でも100社に満たない程度に過ぎません。

7 マネジメント スケジュール管理によるマネジメント

プロジェクトをマネジメントする手順

8 ビジネスに役立つツール

9 必読書

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