プロジェクトは、多数の仲間との仕事です。ひとりひとりがどこに向かって仕事をしているのかを知らないと、同じ目的地につくことはできません。ゴールを理解していないと、右に行くべきところをひとり左に行こうとしたり、止まるべきところでアクセルを踏んだりと、全体の進捗の邪魔になるだけです。明確なゴール設定はそれだけで判断基準になります。

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7.7.1 ゴール設定

7.7.1.1 顧客は誰かを明確にしておく

それがプロジェクトであれば、そのプロジェクトの成果/結果を望む顧客が必ず存在します。単にあなたの上司が顧客のこともありますが、もっと広い視野でみれば、上司の顧客・会社の顧客が実際の顧客であることも多いでしょう。
その場合は、実際の顧客があたなのプロジェクトをどう評価するかを頭に置いておく必要があります。

法人の場合は最終決裁者とキーパーソンがわかる階層図か表を作る

プロジェクトの顧客が個人でない(部、課、会社、団体、官公庁など)の場合は、相手先の体制を明確にしておく必要があります。
ひとつは相手の組織階層図で、この件での最終決裁者を最上位に持ってきた階層図です。階層図には最終決裁者が、最上位にあり、そこからこのプロジェクトに関係する部署や人の関係が分かる階層図です。

その中で、最終決裁に至るまでのキーパーソンを明確にしておきます。通常は実務上の責任者とその上司になりますが、経理部長など最終決裁者が信頼を置いている人がキーパーソンであることもあります。ここを見誤ると不毛な努力になります。

顧客が不特定多数の場合は、メインターゲットを絞り込む

顧客は特定の誰かとか企業(自社を含む)の場合もありますが、不特定多数の一般顧客を対象とすることもあります。

何であれすべての顧客を満足させるものなどありません。不特定多数の顧客に対して顧客満足をゴールにするには、顧客を特定する、絞り込むことです。
男女、年代、職業、貧富、生活環境など絞り込めば絞り込むほど、顧客のイメージがつかみやすくなり、顧客が満足する内容が明確になります。

絞り込んだ顧客以外を排除する必要はありませんが、まずは絞り込んだ顧客をターゲットにすべきです。コアの顧客の満足を得られるものでなければ、ぼやけたプロジェクト結果に終わります。

会社の社員が顧客の場合は、全社員なのか、特定の部署の社員なのか、新入社員とか、役職とか、顧客をより絞り込むとゴールイメージが明確になります。

7.7.1.2 ゴールイメージ:顧客満足度

ゴールイメージを文書化しておく

あなたと顧客またはあなたのプロジェクトを評価する人たちとゴールイメージをなるべく具体的に共有することが大切です。
企画書や提案書が作成され、それが顧客またはプロジェクトを評価する人たちが承認したものであれば、それがゴールイメージの共有化を図るものとなります。

共有したゴールイメージを成果物に盛り込む

長期のプロジェクトであれば、ゴールイメージを示したものを文書化しておくことは重要です。

企画書や提案書といったものが無い場合は、プロジェクトをスタートする前段階で、顧客やプロジェクトを評価する人たちと話し合いの場を設け、できるだけ具体的にゴールイメージを共有化しておく必要があります。

短期のプロジェクト以外では、その共有したイメージをメモ程度でも文書に落とし、確認してもらうこともすべきでしょう。望ましいのは、作業途中のドキュメントに盛り込み、顧客の承認を得ておくことです。

※要件定義書、基本設計書などは、ゴールをイメージする文書です。RFP(Request For Proposal)を使う場合は、そのうちのどれをどこまで実現するか明確にしておく必要があります。

数値目標と状態目標で定義する

ゴールイメージには数値目標と状態目標があります。これはどちらかではなく、両方設定しておきます。

数値目標は、計測できるもの、売上高2000万円とか、人件費15%削減とか、月間1500個販売とか、数値で計測できる目標です。これはいくつか設定してもかまいませんが、少なければ少ないほど、作戦を絞り込みやすくなり、この言葉が目標として共有されると、このプロジェクトに参加するメンバーの力を結集しやすくなります。

状態目標は、数値では一概に測定できないものです。好感度が上がったり、社員のモチベーション向上に役立ったり、などそのプロジェクトの結果によってもたらされる状態です。

顧客満足度、クレーム件数、事故件数などある程度数値化できるものもありますが、状態の全体像を数値で把握することは難しく、そうしたものは状態の一面だけを捉えた、あくまで補助的なものです。それでも数値化して評価したいなら、あとで比較できるように、事前に現状を数値化しておく必要があります。

デリケートなプロジェクトなど、例外もある

デリケートなプロジェクトで、あなたがそのプロジェクトの周辺に関わっているに過ぎない場合、上司は必要な情報だけをあなたに伝え、全体像の説明をしないことがあります。そうしたプロジェクトの場合は、しつこくプロジェクトの目的を聞き出そうとしても、迷惑がられるだけです。

また、マネジャーのタイプによっては、プロジェクトをパーツパーツに分けて割振り、それぞれに必要な情報しか与えないことがあります。
これは自分の作戦に対して何か言われるのを嫌うタイプのマネジャーによくあるやり方です。そのタイプのマネジャーは、余計な口出しはせずに、言われたことをキッチリやるタイプの部下を好みます。この場合もよほど信頼されてないと、あなたはプロジェクトの全体像を知ることはできません。

7.7.1.3 期日

いつまでにそれを達成するか、期日のないプロジェクトはありません。期日内に終わることは、顧客が満足する大前提です。

期日は納期、竣工日といったものから発売日、発表日、稼働日、施行日などといったものがあります。

大規模建造物など最終期日が5年先などということもあるし、性能向上など期限のないテーマもあるでしょう。
そんな場合は、今年、半期、今月、来月などで、どこまで進捗しておくべきかを設定します。設計完了とか基礎工事完了とか特定のイベントがあれば、それでよいですが、特にない場合は、5月末までに25本中12本完成とか、30%完了とかでもかまいません。

7.7.1.4 予算

いくら良いものが期限通りにできようと当初予算を大幅にオーバーしては、評価は半減します。

スタートする前に、期限内にそのプロジェクトをやり遂げるのにどれだけ予算があるのかを明確にしておきます。このときの予算には使える金額だけでなく、人材、設備・機材、スペースなどが含まれます。

予算を計量化する

予算は、実績と対比させることで管理可能となります。そのためには、あらかじめ予算を使い道ごとに具体化しておく必要があります。

金額予算であれば、資金使途(何にいくらつかうのか、いつ支払うのか)を明確にしておく必要があります。これらを具体化していないと、終わってみるまで予算内だったかどうかわからないことになります。なにより必要な費用の見落としを防げます。

人材であれば、だれをいつまで拘束するのか、専任でなければ、いつからいつまで何時間ぐらい拘束するのかを概算で出しておく必要があります。人材が自分の管理下以外の人材であれば、その人材のマネジャーに拘束する期間や時間の了解をとっておきます。

損益評価のためには人件費を金額に換算する

もしプロジェクト管理(プロジェクト損益)をするなら、それぞれの要員の拘束に対して、その人ごとの時間単価をかけ、人件費に換算しておきます。
その場合の時間単価は、社内に取り決めがないなら、(基本給+役職手当)×1.5~2÷(月間勤務日数×7時間)で算出します。
人材が下請けなどの場合は、下請けに払う経費として金額換算します。

その他の予算

そのプロジェクトのために、機材や場所を用意する必要があるなら、機材ごとの使用期間、作業場所を確保しておく期間を明確にし、所有者に了解を取っておく必要があります。それが社内の資産でないなら、レンタルや購入する費用を金額換算しておきます。

こうした金額換算は、プロジェクトの経費見積もりになり、大規模プロジェクトの場合、あらかじめ経費見積もりに対して承認を得ておきます。この承認の範囲内であれば、プロジェクト期間中の出費に対して、とやかく言われるのを防ぐことができます。

INDEX
7.7.2 プロジェクトマネジメントは段取りがすべて
7.7.3 進捗を管理しなければスケジュールを立てた意味がない
 

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