厳しく部下を叱責することがマネジメントだと勘違いしている上司がいます。しかしパワハラまがいの恐怖で部下を支配しようとすると、いつまでたっても人が育たず、組織としての力を発揮することができません。
恐怖は部下を委縮させる
恐怖で支配しようとすると、部下は萎縮し、それぞれが小さくまとまろうとします。部下それぞれは、ミスがでないよう自分の守備範囲を狭めていきます。何か間違いがあったとき、まず考えるのが、それが自分の守備範囲かどうかです。守備範囲でないとみなした仕事は、会社全体の業績を左右するようなことであっても、見て見ぬふりをします。
こうした部下が増えてくると、仕事は隙間だらけになり、定型的な仕事はなんとかなっても、例外や突発事項が出てくると、作業や責任の押し付け合いが始まります。
恐怖からは何も生まれない
怒られたくない、叱責されたくない、そんな理由で仕事をしていては、部下に仕事を遂行する達成感はなく、ましてよりよい結果を残そうとするモチベーションは生まれてきません。それぞれが自分の保身第一になり、分担して、協力して、それぞれを補完して仕事を成し遂げていく土壌は生まれません。
またそういった環境で育った部下は、自分が部下を持つようになったとき、同じように恐怖で管理しようとし、結局、人や組織を育てることができません。
恐怖で部下は成長しない
叱責や気合だけでも大概のことは解決できます。ただし、そのときだけです。課題に組織として向かう気持ちがなければ、解決できても経験が蓄積されず、それが発生することを事前に防ぐことができずに、また同じような叱責や気合が必要になります。
動物に芸を覚えこませ、熟達させるのは、怒号やムチではありません。彼らをほめ、報酬を与えることです。これは人も同じです。さらに、サルやイルカにはできない、人が自ら仕事をより良いものにブラッシュアップしていく原動力は、恐怖や叱責ではなく、達成感や成果に対する喜び以外にありません。
部下の失敗を成長の機会にする
人が学ぶ最大のチャンスは失敗したときです。部下が失敗したなら、その部下は今最大の学びのチャンスにあります。そんなときあなたが頭ごなしに部下を叱っていては、部下はせっかくのチャンスをものにすることはできません。あなたが部下のためにできる最大のことは、部下に失敗から学ぶ時間を与えることです。
「たるんでる」は繰り返される
部下のミスに対してガミガミ怒鳴ったり、嫌みを言うだけだったり、「たるんでいる」という一言で片づけると、当面は大丈夫ですが、しばらくすると部下はまた同じようなミスを引き起こします。そのたびにあなたはガミガミ言わなくてはならなくなります。
ミスがチェック漏れなどの単純ミスの場合は、2重チェックや別視点での照合など、テクニカルな方法を組み込むよう指導する必要があります。しかし当人の取り組み姿勢、考え方に起因するようなミスは、そんな方法ではなくなりません。
考え方に起因するようなミスを繰り返さないようにするには、部下にそれまでの自分のやり方を修正してもらう必要があります。場合によっては、修正ではなく否定が必要になるかもしれません。
部下が失敗から学ぶ機会を奪わない
それには本人が自分から「変える必要がある」「変えなくてはダメだ」と考えない限りは、いくらガミガミいっても治りません。むしろガミガミ言われることで、部下は自分の意思で反省する機会を失い、怒られるからやるということで終わってしまいます。何故そうすべきかを自分で理解しない限りは、また同じような間違った判断をし、何かをやらかします。
部下がミスしたとき重要なのは、ミスであることを気づかせ、部下自らに失敗の原因を考え、どうすべきかを考える時間を与えることです。
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